文学的文章(小説・物語・エッセイなど)の長文読解は,場面の状況と登場人物の心の動きを,本文の記述にもとづいて正確に読み取れるかを問う問題です。説明的文章とは違い,筆者の主張が直接書かれることはほとんどありません。このページでは,文学的文章を読むうえでの基本方針と,状況設定・心情のおさえ方,そしてよくある設問パターンを整理します。
文学的文章を読むうえでの基本方針
設問に目を通したうえで本文をよく読み,「状況設定」「登場人物の行動・発言」「登場人物の思考・感情」を正確におさえる
| おさえること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 状況設定 | いつ・どこで・誰が登場し,どのような状況におかれているか |
| 行動・発言 | 登場人物が何をしたか,何を言ったか |
| 思考・感情 | 登場人物が何を考え,どう感じているか |
文学的文章では,登場人物の思考・感情が直接書かれず,行動・発言を通して間接的に表されることが多くあります。「なぜこの人物はこうしたのか」「このせりふの裏にはどんな気持ちがあるのか」を,常に考えながら読み進めましょう。
状況設定をおさえる
5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して読む
語り手は誰か(一人称の I か,三人称か)/ 時間の流れ(回想場面は過去完了で表されることが多い)
I had not seen my grandfather for ten years. When I finally visited his small house by the sea, he was sitting on the porch, just as he used to.
私は10年間,祖父に会っていなかった。ようやく海辺の祖父の小さな家を訪ねると,祖父はかつてと同じようにポーチに座っていた。
物語の冒頭では,登場人物の関係と場面の背景が示されることがほとんどです。冒頭の数文で状況設定をしっかりつかんでおくと,その後の心情の変化が読み取りやすくなります。had not seen の過去完了は,訪問した時点より前の「10年間」を表しています。完了形の基本は「時制 Level 2」で確認しましょう。
行動・発言から思考・感情を読み取る
登場人物の心情は,動作・表情・せりふによって間接的に表される
When Mia opened the letter, her hands were shaking. She read it twice, then folded it carefully. "Well?" her mother asked. Mia said nothing, but a smile slowly spread across her face.
手紙を開けたとき,ミアの手は震えていた。彼女はそれを2回読み,それから丁寧にたたんだ。「それで?」と母親が尋ねた。ミアは何も言わなかったが,その顔にはゆっくりと笑みが広がった。
本文には「緊張した」「うれしかった」とは一言も書かれていません。それでも,手が震える → 2回読む → ゆっくり笑みが広がるという行動の流れから,「不安 → 信じられない思い → 喜び」という心情の変化が読み取れます。
心情を表すよくある表現
| 表現 | 読み取れる心情 |
|---|---|
| her hands were shaking | 緊張・不安・恐怖 |
| bit his lip | 悔しさ・ためらい・感情をこらえる |
| avoided her eyes | 気まずさ・後ろめたさ |
| his face lit up | 喜び・期待 |
| sighed | 落胆・あきらめ,または安堵 |
| shrugged | 無関心・あきらめ・「分からない」 |
sighed(ため息をついた)のように,場面によって正反対の心情を表す表現もあります。表現だけで判断せず,前後の状況と合わせて考えましょう。
"Great," he said, looking out at the pouring rain.
「最高だね」と,彼は土砂降りの雨を見ながら言った。
せりふの言葉どおりに受け取ると「喜んでいる」ことになりますが,土砂降りの雨を見ながらという状況を考えると,これは皮肉です。せりふは必ず,その場の状況と照らし合わせて読みましょう。
よくある設問パターン
「よくある」文学的文章の設問パターン
| 設問パターン | 問われていること |
|---|---|
| 状況の把握 | どのような登場人物が,どのような状況におかれているのか |
| 感情 → 行動 | 各登場人物は,自らの思考・感情に応じてどのような行動・発言をしているのか |
| 行動 → 感情 | 各登場人物は,他の登場人物の行動・発言に応じてどのような思考・感情をもっているのか |
心情を答える問題では,本文に根拠のない心情を補わないことが大切です。「自分ならこう感じる」という想像ではなく,本文中の行動・発言・情景描写を根拠にして答えましょう。選択肢問題・内容説明問題・理由説明問題の解き方は「長文読解(説明的文章)」で扱っています。
詳しい説明を読む
情景描写にも注目する
文学的文章では,天気や風景などの情景描写が登場人物の心情を映し出すことがあります。
As she walked home alone, the gray clouds seemed to follow her.
一人で歩いて帰る彼女の後を,灰色の雲がついてくるようだった。
gray clouds(灰色の雲)が,一人で帰る彼女の沈んだ気持ちを表しています。ただし,情景描写だけを根拠に心情を断定するのは危険です。必ず登場人物の行動・発言と合わせて判断しましょう。
確認しよう
状況設定 → 5W1H,語り手,時間の流れ
行動・発言 → その裏にある思考・感情を考える
心情の根拠 → 本文中の行動・発言・情景描写に求める
→ 何かを言いかけてやめた:言いたいことがあるが,ためらっている
She kept glancing at the clock during the meeting.
→ 会議中に何度も時計を見た:早く終わってほしいと思っている,退屈している
When he heard the news, he sat down slowly and stared at the floor.
→ ゆっくり座り込み床を見つめた:知らせに大きなショックを受けている