英文和訳は,英文の構造を正確に把握し,それを日本語で過不足なく表現できるかを問う問題です。国公立大の二次試験を中心に,多くの大学で出題されます。このページでは,英文和訳の基本方針と,「構文把握 → 直訳 → 修整 → 確認」という4つの手順,そして分からない単語・表現への対処法を整理します。
英文和訳の基本方針
本文全体を読んだうえで,「構文把握」「直訳」「修整」「確認」という一連の手順を「正確に」「確実に」踏む
下線部だけを読んで,いきなり訳し始めるのは禁物です。指示語が何を指すか,多義語がどの意味で使われているかは,前後の文脈によって決まります。まずは本文全体に目を通し,話の流れをつかんでから下線部に取りかかりましょう。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 構文把握 | 文全体の構造(SVOC)と,各語句のつながり・かかり方をつかむ |
| 直訳 | 構文把握の結果を,品詞や構造を変えずにそのまま日本語に移す |
| 修整 | 直訳で日本語として不自然になった箇所だけを直す |
| 確認 | 訳し漏れ・取り違えがないか,日本語として通じるかを見直す |
4つの手順のうち,最も大切なのは構文把握です。構文把握を誤ると,その後の手順をどれだけ丁寧に踏んでも正しい訳にはなりません。
手順1:構文把握
構文把握で確認する4つのポイント
① 文全体の構造(SVOC)
② 各単語・表現の品詞,つながり・かかり方
③ 特殊な重要構文・文法事項
④ 訳すうえで注意するべき単語・表現
What surprised the researchers most was that the children who had been given fewer toys played more creatively.
研究者たちを最も驚かせたのは,与えられたおもちゃが少ない子どもたちのほうが,より創造的に遊んだということだった。
| ポイント | この英文での確認事項 |
|---|---|
| ① 文全体の構造 | What ~ most が主語,was が動詞,that 節が補語(SVC) |
| ② つながり | who had been given fewer toys は直前の the children を修飾する |
| ③ 重要構文 | 関係代名詞 what(〜こと),比較級 fewer / more creatively |
| ④ 注意する語 | had been given は過去完了の受動態(「与えられていた」) |
長い英文では,まず文全体の動詞(述語動詞)を見つけるのが近道です。この英文では was が文全体の動詞で,surprised と played は節の中の動詞です。文の構造の基本は「文 Level 1」で確認しましょう。
手順2:直訳
構文把握の結果を,品詞や構造を変えずにそのまま日本語に移す
主語は主語として,修飾語は修飾語として訳す
The rapid spread of smartphones has changed the way people communicate.
直訳:スマートフォンの急速な普及は,人々がコミュニケーションをとる方法を変えた。
直訳の段階では,日本語の自然さよりも英文の構造を正確に反映することを優先します。直訳がきちんと作れていれば,構文把握が正しくできていることの確認にもなります。
手順3:修整
直訳で日本語として不自然になった箇所だけを直す
無生物主語 / 名詞表現 / 長い主語 / 受動態 などは修整が必要になりやすい
The rapid spread of smartphones has changed the way people communicate.
修整:スマートフォンが急速に普及したことで,人々のコミュニケーションのとり方は変わった。
修整は日本語として不自然な箇所に限って行います。意訳しすぎると,構文を理解していないとみなされて減点されることがあります。無生物主語と名詞表現の訳し方は「無生物主語構文 Level 1」「名詞表現 Level 1」で詳しく扱っています。
手順4:確認
訳し終えたら,次の4点を必ず見直す
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 訳し漏れはないか | 副詞(only / even / still など)や形容詞を落としていないか |
| 構造を取り違えていないか | 修飾語のかかり先,and / or が結ぶものは正しいか |
| 時制・否定・数量は正確か | not always(いつも〜とは限らない),few と a few の違い |
| 日本語として通じるか | 主語と述語が対応しているか,一読して意味が通るか |
not always / not all(部分否定)や few / little(ほとんど〜ない)は,訳し方を誤ると文の意味が逆になります。否定の表現は「否定 Level 1」で確認しましょう。
分からない単語・表現が出てきたら
〈中からの〉アプローチ:表現そのものを分析する
〈外からの〉アプローチ:前後の文脈を把握する
| アプローチ | 手がかり |
|---|---|
| 中から | 単語そのものの持つニュアンス(接頭辞・接尾辞など)/ 多義語の持つ日本語のヴァリエーション |
| 外から | 指示語・接続詞 / 前置詞などの持つニュアンス / 本文全体の流れ |
The new policy was met with widespread skepticism; many citizens doubted that it would actually reduce crime.
その新しい政策は広く懐疑的に受け止められた。多くの市民は,それで本当に犯罪が減るのか疑っていた。
skepticism を知らなくても,セミコロンの後の many citizens doubted ~(多くの市民が〜を疑った)がその言い換えになっていることから,「疑い」「懐疑」といった意味が推測できます。これが〈外からの〉アプローチです。
The company was criticized for its failure to address the problem.
その会社は,問題に取り組まなかったことで批判された。
address は「住所」「演説」だけでなく,動詞で「(問題などに)取り組む」という意味があります。知っている意味を当てはめて文脈に合わないときは,多義語の別の意味を考えましょう。これが〈中からの〉アプローチです。
確認しよう
本文全体を読む → 文脈から指示語・多義語の意味を決める
構文把握 → SVOC,修飾関係,重要構文,注意する語
直訳 → 修整 → 確認 → 不自然な箇所だけを直し,最後に必ず見直す
→ 構文把握:It was not until ~ that … の強調構文
→ 直訳:「彼女が健康を失うまで,彼女はその価値に気づかなかった」
→ 修整:「健康を失って初めて,彼女はその価値に気づいた」
Few people noticed the change.
→ 確認:few は「ほとんど〜ない」
→ 「その変化に気づいた人はほとんどいなかった」
強調構文については「強調 Level 1」で詳しく扱っています。